妊婦さんの貧血
赤血球のヘモグロビンは酸素をからだのすみずみにまで運び、帰りに二酸化炭素を回収する役割があります。
ヘモグロビンは、主成分の鉄とたんぱく質が合成されて作られます。
女性には生理があるため、妊娠していなくても貧血ぎみの人が多く、妊娠した後も約6割の人に鉄欠乏性貧血が見られます。
貧血になると、めまい、吐き気、頭痛、息切れ、動悸、食欲不振、下痢などの症状が現れます。
女性は生理によって毎月15〜45mgの鉄を失っています。
これは食事から摂取する鉄分の約1カ月分!
普通に摂取していてもほぼ±0ということです。
そのため女性は妊娠していないときから、毎日男性の2倍の鉄分をとる必要があります。
そして妊娠すると、母親の体は赤ちゃんへ胎盤経由で血液を送ります。
そのため母親の体内では血液の量が増え、妊娠8カ月の時点では妊娠前の約1.3倍の血液量があります。
人間の血液の量は体重の1/13なので、50kgの人では約3・8kgから5kgに増え、妊娠8カ月になると約1・2kg増加します。
母親の血液が増えると、主に血漿成分が増える事と、赤ちゃんに必要な鉄分が送られて赤血球が少なくなることで、血液が薄くなり鉄欠乏性貧血になります。
また母親自身に必要な鉄分が不足した際も、まず赤ちゃん最優先で鉄分が送られるので、母親の貧血はますますひどくなります。
それで妊娠中は増えた血液のために450mg、赤ちゃんに送るために360mgの鉄が必要になります。
定期的に血液検査をして、毎日の食事で十分なだけ鉄分がとれていない場合、医師が鉄剤を処方することがあります。
ちなみに当然のことながら偏食や極端なダイエットはご法度です。
貧血を防ぐ食事
鉄が豊富な食品は、レバー、ホウレンソウ、小松菜、卵黄、肉、大豆など。
妊娠初期から積極的にとることをおすすめします。
それとともに血液をつくるのを助ける ビタミンB6、B12、葉酸、ビタミンC、ビタミンEが豊富な食品を一緒に食べる事も大切です。
ビタミンB6は、ヘモグロビンの成分であるたんぱく質が鉄と合成されるときに必要なビタミンです。
ビタミンB6が足りないと、ヘモグロビンが作れなくなってしまいます。
ビタミンB6は、レバーや魚、とうもろこし、米ぬかなどにたっぷり含まれています。
ビタミンB12は葉酸と一緒に赤血球生産に関わりがある成分です。
葉酸は赤血球の中の遺伝子をつくっている核酸を合成し、遺伝子をコピーするときにできた異常を修正します。そのときビタミンB12は葉酸の働きを高める働きをします。
ビタミンB12が不足すると赤血球が減ったり、異常に大きくなった奇形の赤血球ができるなど貧血の原因となります。
ビタミンB12は、牛乳、レバー、シーフード、海藻類にたくさん入っています。
葉酸の不足は、赤血球の不足や、遺伝子に異常がある赤血球の生成を引き起こします。
また胎児が成長するときにも葉酸は欠かせません。 細胞分裂や成長に非常に深い関わりがあるので、葉酸不足の場合、胎児に奇形が出る可能性が高くなります。
レバーやかつお、鮭、まぐろ、モロヘイヤなどに入っています。
ビタミンCは貧血を防ぎます。
赤血球ができるときに直接作用するわけではないものの、鉄の吸収を助けるとても大切な栄養分です。
トマト、みかん、柿、レモンなどにたっぷり入っています。
抗酸化作用が高く、活性酸素の発生を抑えるのはビタミンE。
赤血球の表面の膜をつくっている不飽和脂肪酸が、活性酸素によって酸化して破壊されることを防ぎ、赤血球が減少しないように働きかけます。
ビタミンEはカボチャ、アボカド、うなぎ、アーモンド、ひまわり油などに含まれています。